AIに「私の資産を見せて」と言うだけでポートフォリオ分析ができる仕組みを作った
はじめに
「私のポートフォリオを教えてください」
AIにこう話しかけるだけで、自分の保有資産が一覧表示され、評価損益の分析や、FIRE(経済的自立)の可能性まで計算してくれる — そんな仕組みを作りました。
技術的には MCP(Model Context Protocol) という、AIにツールを渡すための標準プロトコルを使っています。
ただ、この記事で一番伝えたいのは、ポートフォリオアプリを作った話ではありません。
固有のデータを蓄積し、Webアプリで人が管理しやすくし、AIとの接続口を作る。この3ステップを踏めば、データの活用が劇的に変わる — ということです。
今回はその実例として、個人の資産管理アプリにMCPサーバーを組み込み、AIがポートフォリオに直接アクセスできるようにした話をします。
何ができるようになったか
Claudeに自然言語で話しかけるだけで、以下のことができます:
- 保有資産の一覧表示 — 株式、投資信託、不動産、現金、暗号資産まで全て
- ポートフォリオの評価 — アセットアロケーションの偏り、リスク分析、改善提案
- ポートフォリオ見直しの提案 — 目標や市場環境に応じたリバランス案の提示
- FIRE診断 — 現在の資産と支出から、経済的自立に必要な条件を逆算
従来のポートフォリオ管理ツールは「データを見る」ことしかできません。MCPを使うことで、AIが「データを見て、考えて、提案する」ところまで一気通貫でやってくれます。

MCPとは何か — AIに「手」を与えるプロトコル
MCP(Model Context Protocol) は、Anthropicが2024年末にオープンソースで公開したプロトコルです。
一言でいうと、「AIに外部ツールを使わせるための標準規格」。
ChatGPTのFunction Callingに似ていますが、MCPはモデルに依存しないオープン標準で、サーバー側に1回実装すれば、対応するあらゆるクライアントから利用できます。
現時点で対応しているクライアントの例:
- Claude Code — ターミナルで動くCLI型のAIアシスタント
- Claude Desktop — Anthropicのデスクトップアプリ
- GitHub Copilot(VS Code) — エディタ内のAIアシスタント
- Cursor — AI特化のコードエディタ
重要なのは、AIがどのツールをいつ使うかを自分で判断するということ。ユーザーは「ポートフォリオを見せて」と言うだけで、AIが裏側で資産取得ツールを呼び出し、結果を解釈して返してくれます。
アーキテクチャ:意外とシンプル
全体の構成はこうです:
┌──────────────────────────────────────┐
│ Claude Code / Desktop │
│ 「ポートフォリオを教えて」 │
└──────────┬───────────────────────────┘
│ MCP (HTTP + JWT認証)
▼
┌──────────────────────────────────────┐
│ Webアプリ(MCPサーバー) │
│ ・資産一覧の取得 │
│ ・資産サマリーの取得 │
│ ・資産種別ごとの取得 │
└──────────┬───────────────────────────┘
│
▼
┌──────────────────────────────────────┐
│ データベース │
│ portfolios / holdings テーブル │
└──────────────────────────────────────┘
ポイントは3つ:
- MCPサーバーはWebアプリに同居 — 既存のアプリにAPIエンドポイントを1つ足すだけ。別サーバー不要
- JWT認証 — Settings画面でトークンを発行し、有効期限付きで安全に管理
- ツールの説明文がカギ — AIは説明文を読んで「どのツールをいつ使うか」を判断する。ここの書き方でAIの賢さが変わる
MCPサーバーの設置に大がかりなインフラ変更は不要です。既存のWebアプリにAPIルートを1ファイル足すだけで始められます。
実際に使ってみる
※以下のスクリーンショットに表示されている資産データは、記事用に作成したダミーデータです。実在のポートフォリオではありません。
「私のポートフォリオを教えてください」

AIがMCPツールを呼び出し、資産種別ごとの集計と一覧表を返してくれます。データベースの構造や集計ロジックをユーザーが知る必要は一切ありません。
「現在のポートフォリオを評価して」

ここからがAIの真価です。データを取得するだけでなく、アセットアロケーションの分析、リスクの指摘、改善提案まで出してくれます。これは従来のダッシュボードツールにはできないことです。
「私はFIREできますか?」

冗談半分で聞いてみたFIRE診断。AIが真面目に年間支出を仮定し、4%ルールで逆算してくれました。結果は…まだ道のりは長いようです(笑)
使っている技術
| カテゴリ | 技術 |
|---|---|
| Webアプリ | Next.js(App Router) |
| データベース | Neon Postgres |
| ORM | Drizzle ORM |
| MCPサーバー | @modelcontextprotocol/sdk |
| 認証 | JWT(トークン発行・検証) |
| ホスティング | Vercel |
| AIクライアント | Claude Code / Claude Desktop |
MCPサーバーの実装は、公式SDKを使えば比較的簡単です。ツールの定義は「名前」「説明」「入力パラメータ」「実行する処理」の4つを書くだけ。あとはSDKがプロトコルの通信部分を全て処理してくれます。
次にやりたいこと
この仕組みの面白いところは、MCPツールを足せば足すほどAIにできることが増えるということ。
現在は「ポートフォリオを見る」だけですが、今後は:
- ニュース分析との連携 — 「保有銘柄に関連するニュースある?」
- YouTubeトレンド分析 — 急上昇動画のコメントから市場の空気感を読む
- 銘柄スクリーニング — 「配当利回り4%以上で割安な銘柄を探して」
AIが自分専用のデータベースを自由に検索できる状態を作ると、「質問するだけで答えが返ってくる」体験が本当に快適です。ダッシュボードを開いて自分でフィルタする時代は終わるかもしれません。
おわりに
今回はポートフォリオ管理で試しましたが、この仕組みの本質は資産管理に限りません。
自社の固有データを蓄積する。Webアプリで人が扱いやすくする。そしてAIとの接続口を用意する。
この3つが揃えば、あとはAIに「聞くだけ」でデータが活きはじめます。顧客データ、在庫、売上、問い合わせ履歴 — どんな業務データでも同じ構造で実現できます。
MCPはまだ新しいプロトコルですが、既存のWebアプリにAPIエンドポイントを1つ足すだけで始められます。興味がある方はぜひ試してみてください。
(FIREはもう少し頑張ります)