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考え

「課題を見つける目」は本当に残るのか

「これからは課題を見つける目が大事になる」と、私はあちこちで言ったり書いたりしてきた。

技術がコモディティ化しても、お客さまが何に困っているかを見つけて、仕組みにする力は残る。そう信じてやってきた。

正直に言うと、その自信は今、少し揺らいでいる。

きっかけは、ある日の自分の仕事を振り返ったときだった。

私はある中小企業の業務改善の相談を受けていて、業務フローのヒアリングメモを Claude に渡した。「ここから AI で自動化できそうな箇所を5つ挙げて」と書いた。

返ってきたのは、私が3日かけて見つけたであろう候補とほぼ同じだった。しかも理由付きで。整理されていて、私のメモより読みやすかった。

「課題を見つける目」を、AI が手にし始めている。

もちろん、AI が出した5つを「これでいきましょう」と顧客にそのまま提案できるわけではない。粒度は粗いし、その会社の文脈をすべて踏まえているわけでもない。最終的に「ここをやる」と決めるのは私の仕事だ。

でも、その判断にかかる時間が短くなっている。

短くなった分の時間で、私は何をしているか。考えてみると、「AI が出した候補のうち、どれが本当にこの会社で動くか」を判断している。それは前と違う仕事のように見えるが、本質的には「現場を見る目」と同じだ。

つまり、AI は私の作業を奪っているが、私の判断はまだ奪っていない。少なくとも、今のところは。

ここで一度立ち止まる。

「今のところは」と書いた瞬間に、私は逃げていると気づく。

1年後、もしかしたら AI は判断もし始めているかもしれない。「この会社の文脈ではこちらの候補が動く」と、根拠付きで言ってくるかもしれない。実際、AI Lab で組んでいる仕組みは、社内の議事録や顧客対応メモを踏まえて分析するところまで来ている。それを推し進めれば、判断もできるようになる。

そうなったとき、私には何が残るのか。

ひとつ思っていることがある。

AI は、過去のパターンから最適解を出すのは速い。でも「過去のパターンに当てはまらない問題」を、当てはまらないと判断するのは、まだ人間の方が速いように感じている。

たとえば、会社のオーナーが「業務効率化」と言っているけど、本当に困っているのは別のこと――息子に事業を継がせる時の信頼の問題だったり、長年の顧客との関係をどう次の世代に渡すかだったり――そういう種類の問題は、業務フローを分析しても見えてこない。

問題が「業務の中」で起きていない時、AI は気づけない。気づくのは、相手の表情や、間や、語られなかったことに反応する人間だ。

ただ、これも、いつまで成立するかは分からない。AI が音声・映像・対話の中から「語られなかった懸念」を拾い始める日も、たぶん遠くない。

正直に書くと、結論はまだ出ていない。

「課題を見つける目は残る」と前に断言した私は、少し急いでいたかもしれない。残るかもしれないし、削られていくかもしれない。確からしいのは、残る範囲が 狭くなっている ということだ。

狭くなるなら、その狭い範囲をどれだけ深く磨けるか、になる。

私が信じているのは、AI が機械的に出した5つの候補のうち、6番目を見つけられる側でいたい、ということだ。リストにない選択肢に気づくこと。それは、知識の量ではなく、現場で人と一緒に時間を過ごした経験から来る気がしている。

これは仮説で、答えではない。

同じことを考えている人がいたら、聞かせてほしい。

あなたの仕事の中で、AI に置き換えられている部分と、まだ残っている部分の境目は、どこにありますか?